国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2015-01-06

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私は讀み乍ら、東北人たる作者が、西國の人と土地を書いてゐることを感じた。眞實に即した立場から云ふと、西國の地方色や西國人らしい情調に乏しいと云つていゝ。默阿彌の『島千鳥』の松島千太と明石の島藏とには、大まかながらも、東北人と中國人との面目が現はれてゐる。徳富蘆花の『黒潮』に出て來る肥後人や長州人にも、何處となくその出生地の面影が見られる。眞山氏の新作の人物には『土佐つぼ』らしいところや、長州人らしいところが、さう現はれてゐないやうである。言葉土佐訛り薩長土語を殆んど用ひなかつたのは、取つて付けたやうに所々に用ひるよりも、却つてサッパリしていゝのであるが、それにしても、臺詞に土の臭ひがない。田舍の青武士が一知半解の理窟を振り廻してあばれてゐるにしては、臺詞が調ひ過ぎてゐる。中村吉藏氏『井伊大老』などの幕末物の西國武士の無器用な、締りのない臺詞に、どことなくあの頃の若い下級の武士らしい趣きがあつたやうに思ふ。

(『文藝時評』中央公論)

真山青果全集月報 第十号(1941)第八巻


真山青果「坂本龍馬」


中村吉蔵「井伊大老の死」第四幕など