国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2013-01-05

安藤正次「国語史について」『岩波講座国語教育[[安藤正次「国語史について」]]『岩波講座国語教育』 - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - [[安藤正次「国語史について」]]『岩波講座国語教育』 - 国語史資料の連関 [[安藤正次「国語史について」]]『岩波講座国語教育』 - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

 わたくしの考へるところによれば、国語史といふものは、わが国語過去をたづねて有史以前に及び、国語系統を探つて祖語時代に遡り、祖語から相分れた姉妹語との関係を明らかにして、国語成立を説き、漸く降つて、文献の徴証を有する各時代国語の推移発達の跡を逐ひ、さらに現代の国語について、その現状を詳かにする、かういふ広汎な範囲にわたる国語史成立も、理論上においては可能である。しかしながら、かくの如き広義の国語史の前半は、国語の典的研究の領域を越えて、国語の比較研究の範囲に属するものを含むことになる。比較研究は、或意味においては、史的研究の縦への延長と見られるべきものであり、或意味においては、史的研究の横への伸張と見られるべきものであつて、文献の徴証の存する時代の以前に遡るには、姉妹語との比較によるの外はなく、文献の徴証の存する時代にあつても、なほ、その周到を期するには、史料を他に探るの労を執らなければならない。しかしながら、比較研究は、どこまでも、史的研究の基礎の上に立つべきものであり、彼此の言語史的研究の基礎の確立してゐない今日の学界においては、さういふ広義の国語史成立可能は、実際問題として、なほ未知数に属するといはなければならぬ。したがつて、われわれは、国語史の範囲を国語成立期以後に限定し、主として文献の徴証の存する時代国語について、その発達を考察するのを以て、国語史に対する妥当な見解とすべきものであらう。しかし、国語の威立期は、なほ草昧の世に属する。国語祖語時代を先史時代とすれば、国語成立期は、その原史時代である。この時代については、われわれは、わづかに、後を以て古を推し、遺れるを拾つて旧を考へ得るに過ぎない。国語の有史時代は、実に文献の徴証の存する時代にはじまるとすべきものである。

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