国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2012-03-28

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此書は曩に教育會から頼まれて方言辭書を編輯し、愈脱稿する場合となって、語典も是非之に件はねばならぬ工合となつたから、大急ぎに急いで、そこ/\に取りまとめ、辭書原稿と共に會に渡すこととした。

辭書は其後間もなく出版することとなつたが、この語典は種々な都合にて其の通に參らない。かくして月日を經る中、會長江尻君上京の序に上田博士の御目にかけられた樣子である。博士は其の杜撰に驚かれたであらう。又之を不憫に思はれたであらう。併甚親切に調査に關する精密なる方法を教示せられた。そこで其の教示に從ひ出來る丈訂正してみたいと思つたが、それにはよほど精密な調査を要することもあるし、從て匆卒の問には出來ない。辭書は既に出版せられて居る今日、この上尚時日を延ばすことは到底出來ない願望とあきらめねばならない。今は已むを得ず、只一寸書き加へた位で出版することとなつた。博士に對しては實に申譯ない次第である。

序に申すが、元來これ等を編輯する樣になつたのは、方言改良に於て、教育上目下の急を救ふ方針から出たことにて、一時の間に合せに、大急ぎでかき集めたものだから、學問上から見たら、編者のひいき目からでも、半文の値しかないといつて宜しい。それにも關らず、曩にも辭書につき、上田博士の叮嚀な御教示、又言語學雜誌の精細な批評など、實に思ひがけない光榮を辱うし、却て御恥しい次第である。しかしこれもあとの祭、臍をかんでもせんないから、この度こそは博士の御教示に從ひ、自分の學問の爲にも全力を奮つてと思つたが、前に述べた次第、今日の事情、出來ぬせんぎ、かへす/゛\も、博士に對し、又世の人に對しても申譯がない。併、只これからも、心掛けて訂正を怠らず、調査を進め、世の教を空しくしない積ではある。

  明治三十五年中秋    著者しるす


http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992536/105
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