国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2012-03-17

[]出雲の奥州訛出雲の奥州訛り - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 出雲の奥州訛り - 国語史資料の連関 出雲の奥州訛り - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

 奥州訛りといへば、シとス、フとヒ、イとエ、りとルなどの混雑して發音せらるゝことは、誰も知る所である。其の訛りが、東山北陸の二道を隔てた、この出雲一図の狹い範園内に飛火してをることも、亦た多少壮に知られてをる。安来節、又た一般には出雲節と言はれてをる俗謡にも

ワスはオンスのフラタのオマレ、ヅールヌヅール三ヅール、ヌスの果からフガスの果迄、フクヅルフツバル來たものを、エマサラフマトはフマトラノ、フロエセカエネノスフトル

といふのがあるを見ても略察せられる。實際此土地に來て土著の百姓や女の詞を聞くと我等の耳には不通なことが十に六七ある。が、嘗て通辯を待たねば了解しなかった奥州訛りに比べて、幾分耳に聞き易いのは、調子のゆるやかなのと、語気のやさしい爲めであらう。到底出雲は關西化を脱することは出來なかった。

 今頃はこの前の旅行の時、青森縣の法奥津といふ田舎の曉村庵で、四五尺にも餘る氷柱を見てをつた頃だと思ふと、山にも田にも雪のない、埋火同然の火鉢を抱へて別に塞さも覺えぬ氣候の差異をつく/゛\感ずる。出雲訛りが奥州直系に屬することは、恐らく古代からの人種の關係に由ることであらうが、東因伯、西石州、南三値の間に介在して、言語の勢力以外に超然としてをるのは、一種の奇蹟に類する。さうして其の奥州訛りが關西化してをるといふのは、雪と氷柱のない寒威の強弱に因することだ。

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