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2007-10-28

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明治初期の新言語

徳川時代言語で、明治初期に廃絶したのが多くあり、また明治初期の言語で、いつしか廃絶に帰したのもある。前者は別に列挙するが、後者を思い出のまま順序なく記してみる。

▲陸蒸気  今の「汽車」である。幕末には「火輪船」に対して「火輪車」と言い、茎気船に対して蒸気車とも言った。開化都々一「恋の重荷を車に乗せて胸で火を焚く陸蒸気」。

書籍院  今の「図書館」である。明治五年に初めて東京湯島の聖堂内にでき、ついで京都にもできたが、その頃から七、八年間は書籍館と言っていた。

▲摺附木  今の「マッチ」である。明治初年には舶来品ばかりであって「亜米利加附木」または「唐附木」とも称していた。日本で製造を始めたのは七年頃である。

▲ジャンギリ  今の「散髪」である。「散切」と字に書く。散らし切りの義であろう。「ジャンギリあたまを叩いてみれば、文明開化の音がする」という唄もあった。

▲フラフ  今の「国旗」である。「日の丸の旗」とも言った。また一般の旗にも通用した。これは英語の「フラッグ」の転訛であろう。

▲権妻  仮りの妻。妾の一名。戸籍に入れて二等親の格であった。権令、権参事、権大属、権大警視、権判事などいう官名に擬した新語である。

▲かめ  洋犬のこと。新聞雑誌にも「洋犬」と書いた。西洋人が飼犬を連れて散歩の際、カムカム(来たれ来たれ)と言ったのを、洋犬の名と誤解したのが起こり*1

▲たむろ  邏卒の屯所と言っていた「屯」ので「たむろ」と言い、警察署を「たむろ」と呼び、「屯所に棄て児が泣いて世帯じみ」という十二年頃の狂句もある。「屯」は「集まる」の義。

▲開化鍋  牛肉鍋のこと。旧弊人は忌んで食わなかった、からの称呼である。正座を要せず安坐して食し得るので、「あぐら鍋」とも言った。

▲ドンタク  休日または日曜日のこと。これは和蘭陀語の「ゾンタハ」、すなわち日曜日を、「ゾンタグ」と誤まって発音し、それがまた「ドンタク」と転訛し、土曜日を半ドンとも言った。

▲テレガラフ  英語の「テレグラフ」を少し訛った電信機のことである。『新聞都々一』までにも「海山隔てて暮らしていても心は切れないテレガラフ」。

宮武外骨著作集第壱巻 p.21 p.71

河出文庫isbn:4309473164

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