国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2005-10-08

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八年二月四日 第十七号院省庁府県

諸布達の儀は事理辨知し易きを旨とし可成丈、平易の文字相用候様、注意可致此旨相達候事

 左院上申七年十二月二十八日

電信寮七等出仕原田隆造建言の趣、御布告文章認方通俗に読難く誤解し。甚しきに至りては治乱の反対を醸し侯に付、告論文等に至りては他言と格別一種平易に認め方御改正あり度旨云々。右熟議候処、抑布告書類は人民一般に通知遵奉すへきは勿論の処、村夫野人に至りては一行も読過する能はす、事理の弁知し難き上意下に貫徹せさるより不都合を生するに至る。畢竟無学不文なる故のいたす処なれとも人民の知識一朝に通関すへきに非す。故に建言者の如く御布告文等は成るへく丈け平穏の文句を用ゆる方可然。最も右云々に付ては官て本院よりも建言いたし置き侯次第に付因て別紙を附し此段上申侯也


電信寮七等出仕原田隆造建言 七年十二月二十八日

王政一新百事釐正主として民に便益を与へられ、天下皆盛代の恩挙を感戴し奉り、誠に往昔覇者の苛法を設けて民を要するの比にあらさるなり。然リ而して、臣爾来切に思ひ深く求めて、其旨を得さるものあり。是即六年十二月十四日建言せし御布告文章認め方のー件なり。兼て建言仕候通リ告諭文章或は反読熟字新寄巧綴してー漢一和絶て通俗に読み難く、啻に其難きのみならす、一語の正異章体の難易に依りて承伏誤解の得失を致すことあり。蓋し文言相適ふて其事知るへく行ふへし。所謂辞達而已矣。抑告諭は天下人民の為めにせらるヽは勿論、各人戸に説尽されす。故に之れを書に筆して御広頒相成候迄と奉存候へとも、近頃の文体にては語句益真に迫り、迚も中人以下農商共は容易く解し得申さす。故に御布告とさへ申せは措て問はさるに至る。蓋し彼の良民等決して方今の官令を厭拒するにあらす。此の文面にては何の件義たるを了解すへからす。其心に謂らく、各自服用すへきものか、漸くに他人の奉行に倣ひ未た晩しとせす。法式に関するものか、吾固とより違犯の意なし。敢て熟知せすとも咎めなしと自ら断案、果して何項何令あるを顧みす。如此にては人民早晩か其憲法に明なるを期せんや。却て倦退固陋に安し、上下離隔、折角の御仁政も告諭の難易に依て甚たしきは治乱の反対を醸し、実に教化の興衰に拘る一大事と恐察仕候。右等情実は疾より御明瞭在らせられ、故に結文例輪廓、或は到達日限等迄御定めの折柄其告諭文に至ては他書と格別一種平易に認め方御改正然る上、三府六十県、各小区扱所等ヘ御増頒相成候はヽ伝写再版抔の冗費を省き、畢竟、官民の便益之れに過きすと奉存候。右は前日略建言もへとも今又左に概算表并愚存等を付奉申上候。


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今の御布告文字ハ刻体少密にして折釘の如く、兼て文句の難くして加ふるに板行の密を以てす。読者皆之れを厭ふ。旁以御布告文字行書体の大形に御改正相成るへく方かと存候

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布告文中、如何にも平易に認むへからさる文句ありて、他の通俗に読得さるへき恐れあるときは宜く音訓等を付け置れ度。

但両替【今は古語に属す】と云ことを兌換【大蔵省布達】引替、此度を今般今回、引当を抵当、打合を照会抔と書せさるを得さるときは音訓等なかるへからす。新奇を争ふ翻訳書類は格別なれとも、熟字は概ね定数ありて古今に通弁す。尤其時其所に適度の言文を下さヽれは其妙用主旨を失ふへし。況んや其定めなきをや。書の無礼不義を不礼無義、詩の春深秋高を春高秋深と改むるときは、何そ人心に感通するを得ん。前日の建言中に記する血税の二字は其妙用を失ふ、尤も甚しとす。右概算表を作に臨み、適ま見当申侯、第一項、一種、一類、制定、添定、添正、削除、削去、刪除、取消、追加、添加、相加、増補、成規、例則、概則、略則、条例、条款、刊刷、刊行、闕乏【不足と書すべし】等の文字音訓ある方宜しくと存侯



封建の時士農工商等を分ちしより士の文字を講する所あるも、人民は共学の設なし。其弊や民権愚弱殆と国家の不振を致す。今の人民は誠に大病後の如く然り。務めて温養補益の剤を与へされは固有の元気豈復し易からんや。蓋し十年一昔の諺にて人民の智識開明に趣くは概ね順度あるへし。其布告文を解読するは皆当時の漢学者流にて、三千五百万人中実に僅々のみ。現に見る、能く洋書を解する者憲法類篇を読むあたはす。竊に聞、地方の下等官吏に布告全書を解き得さる者ありと。何そ其れ然るや。当今支那の文国と自誇するも、政体民具彼の如く、哀願不興に至るは全く文学の実を失ふより生すと。聞く者慨嘆。即ち能く知識を世界に広求するの聖旨を奉体し、支那学満州文の迂延醜体に擬するを厭ひ、欧亜文明各国の長を取り、茲に富強の大基を開かんとするに至るは実に聖代の大美事なり。必竟文の飾れるは本旨を失ふ所以にして、其直文直筆、以て口に称しやすく、以て心に納めやすく、以て行に便なるときは、精神を費やさす、光陰を空ふせす。早々鉄道電信機等を設けらるゝ折柄【支那文は電報に用ゆべからず。故に六千餘字を番号にて通信す。支那文を用ゆるときは其煩、免れ難し。是れ工部省本年二十四号布達ある所以なり。】軽便の御主意貫徹せんことを要す。

『法規分類大全 政体門』(明治24-27)による。原文、片仮名

http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=72008103&VOL_NUM=00002&KOMA=36&ITYPE=0


国立公文書館に「告諭文章ノ議(電信寮七等出仕原田隆造)」を収める『上書建白書・建白議按草稿録・明治七年』『上書建白書・建白書議按録・明治七年八月~明治七年十二月』あり。明治六年にも「各庁印行書冊ノ制ヲ一定告諭文章ヲ平易ニ認ル等ノ議ニ付建言(広島県平民電信大属原田隆造)」あり。ともに未見



松井利彦1988 太政官布告漢字 『漢字講座8近代日本語と漢字明治書院 p28-56



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