国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2002-08-02

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漢土の方音。韓地の方言の如き。此間の語となりし例は。前にもしるせり。又我書の中に。其義を釈せしも見えたり。梵語の此間の語となりし例。其一二をこゝに挙つべし。たとへば猿をマシラといひ。杜鵑をホトゝギスといひ。水をアカといひ。南風をハエといひ。界をタツキといひ。焼をタクといひ。殕をカビといひ。斑をマダラといひ。曲鈎をハリといひ。調布をテヅクリといひ。杖をカセヅエといひ。智をサトシといひ。愚をヲロカといひ。盛なるをサカエといひ。生をカリといひ。本事あるをサダカといひ。本事なきをサダカナラヌといふの類。また尚多かり。

マシラは摩斯咤也。ホトゝギスは別都頓宜寿也。アカは阿伽也。ハエは婆臾也。タツキは駄都也。タクは陀呵也。カビは迦毘羅也。マダラは曼陀羅也。ハルは婆利也。テツクリは頭鳩羅也。カセツエば刺竭節也。サトシは薩〓[土垂]也。ヲロカは阿羅伽也。サカエは遮迦越羅也。カリは歌利也。サタカは闍陀伽也。是等の外。天をソラといひ。昼をヒルといひ。洲をシマといひ。船をフナといひ。量をハカリといひ。鬘をマルといひ。曲をマガルといひ。母をヲモといひ。残賊をアラといひ。玲瓏をユラといふが如きは。旧事紀古事記日本紀等にしるされし。上世の言に似たる事もあれば。世の疑をも貽しぬべき事なり。されど梵にいふ所と。此にいふ所と。其声音を併せ見るに。正しく彼と此との語の相似たるにもあらねば。上にしるせし所の如く彼語を取りて此語となせし類とは同じからず。ソラは素洛也。ヒルは彌楼也。シマは四摩也。フナは浮嚢也。ハカリは怯梨也。マルは摩羅なり。マカルは摩渇羅婆也。ヲモは阿摩也。アラは阿羅也。ユラは吉由羅也。又これらの外。俗諺にある所の如きは。悉くに挙べからず。

今の俗にいふ所の如き。其一二をしるして例となすなり。たとへぱ主をダンナといふは檀那也。翻して布施といふと見えたり。友をシルヒトといふは。尸利密多羅也。翻して吉友といふと見えたり。威勢あるをイカメシといふは郁伽也。翻して威徳といふとみえたり。癡なるをバカといひ。無知をバカラシなどいふは。慕何を翻して。癡といひ。摩訶羅を翻して無知といふと見えたり。理に合ふ事なきをスダラナシなどいふは修多羅也。翻して契経といふと見えたり。手重きをモダラツクなどいふは母陀羅也。結v印手をいふなりと見えたり。判決をサバクといふは沙婆珂也。善説をいふと見えたり。髪を除くを髪をスルなどいふは周羅也。頂留2一髻。余髻皆除也と見えたり。〓眼をヒガラメといふは。賓伽羅也。翻して青目といふと見えたり。癩疾の人をカハラモノといふは迦摩羅也。翻して癩病といふと見えたり。窃盗をスリといふは朱利草也。翻して賊といふと見えたり。死に近きをアナバタとふは阿耨波陀也。翻して不生といふと見えたり。又蛙蛤の類にアサリといふものは。肉舎利の謂と見えたり此ものには其珠の殊に多きものなり。又サモシキ。ヒスシなどいふが如きは。僧家自ら称して貧道といふがごとし。サモは沙門也。ヒスは芯蒭也。是等の類最多し。古の時。僧家に相謂ひし所の。俗間にも其語を伝へし。猶今も残れるなるべし。


(総論以上)



翻訳名義集』参照のこと。

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