国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2002-08-01

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海をよびてワタといふが如きは。我国太古の言に見えたり。然るを韓地の方言なりといふ事。聞く人の疑を貽すべければ。其事の由をこゝに註するなり。日本紀の例。凡地名の如きは国史撰述の時の名によられしといふ事あり。これは見る人に。便りあるためのみにもあらじ。旧名既に隠れて失せにしかば。今いふ所によりて。記るされし事もありとみえたり。それが中。海をよぴて。ワタといふが如きは。伊佐奈岐伊佐奈彌の二神。生み給ひしといふ神の中に。大綿津見神綿津見神といふの見えしを。海神をいふと見えけり。又太古の俗。其国其神を生み給ひしなどいひしは。或は其国を開き。或は其国を平《ム》け給ひて。其君と立てしをいひしとも見えたり。さらば韓地の如きも。かの二神の代に。或は開き或は平《ム》け給ひしに。その海外にある所なれば。其方言のまゝに。これを呼びてワタといひ。其君をツミとは云ひしなるべし。ツミとは猶地祇といふが如し。後の代に至りて。秦韓の人のこゝに来りしに。姓賜りて秦公読てハダノキミといひしも。また猶ワタツミといひしが如くなりしと見えけり。されど是等の事は。其徴とするに足れる者もあらねば。しぱらく置きて論ぜず。素戔嗚神の天降りませし時。韓地を過て出雲国に至り給ひしといふ事の如きは。本朝の国史に見えし所なり。其後また新羅任那狛国等の人。こゝに来りし事ども。神功皇后新羅を征し給ひし時を待ちしにはあらず。さらば此間の語かしこにも伝り。かしこの言の此間に伝はれる。其因来る所。世すでに久しき事にぞ有ぺき。古言のかしこに出しあらむ。疑ふべき事にしもあらず。

ましてや六経の相伝はれるに及びて。百済の博士等。各其学をもて来り伝へたらむ。其方言の此間の語となりし少なからず。なを今も朝鮮の方言の。其徴とすべきあるは。論ずるに及ばず。其徴とすべきなきが如きも。古今の言風俗と共に移り易りぬる。彼此ともに又同じ。ましてや三韓逓ひに興り亡ぴて。即今の李氏に及びたりしかば。彼古言の今に遺れるもの多かるべきにもあらず。我書に。韓地の方言なりといふものあるが如きは。日本紀に見えし所によりしもの少なからず。



東雅総論(28)

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