国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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1693-02-29

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右の中に、「へ」は「丿」の字にあらじと人の思へるは。音の違へるに依てなり。此字いろはの外、古き他書に用たるを見及ばず。但日本紀に、覇《は》の字を「へ」に用。「弘」の字を「を」に用。「乃」は「な」とこそ用へきに。「能」と用れば。「丿」も疑ふべからず。或人「皿」の字の極草歟といへり。「皿」の字日本紀万葉仮名に用たる事すべてなし。其上、片仮名は。真書の略なるに。今と同し。「皿」の字にあらさる事明らけし。

「と」を或人「土」なりと思ヘり。字のやう更に似ず。倭書を見ずして、和訓仮名に用る事を知らぬに依てなり。「止」なる事片仮名に合せても知へし。

「れ」を漢音を用べからねは、「礼」にあらず、「列」の字の極草といへり。大きに誤まれり。字様現に「礼」の極草なり、「列」の草にあらず。猶片仮名に合せても知るへし、和語漢音を用る事。日本紀は呉漢相半なり。万葉呉音がちにて。漢音をも用たり。他書をまたず。次上の「た」、既に漢音の略なり。又漢音用べからずは。何ぞ、「と」を「土」なりといふや。自語相違せり。

「つ」は俗に「かどつ」といひて。「門」の字と思へり。音訓ともに「つ」とよむべき理なし。又「鬥」の字都豆切なれば。此呉音といふ人あり、さる目なれぬ文字、用らるべくもなし。万葉第十八に、「待」を「末川」とかき、続日本紀に。称徳天皇の宣命の中にも用ゐ、続日本後紀に。尾張連《のむらし》浜主が歌を載たるにも。此字を用たり。しかのみならず。常に「川」、かやうに書も、亦片仮名に「ツ」とかくも、共に此字なり。「川」を「つ」とよむは、「津」の意なり。万葉に、「河津」とも「河門《かはと》」ともよめり。

「〓」を「江」にあらすといふ人あり。和書を見ず、片仮名を思ひ合せぬ故なり。

「め」を「女」にあらず、「妙」なりといふも、和書に携らぬによれり。其上、「妙」の字を仮名に用ゐたる事、日本紀万葉以下、ふつとある事なし。

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