国語史資料の連関 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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1693-02-22

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一 世に行阿といふ人の仮名文字遣といふ物ありて、其序に云、

京極中納言定家卿家集拾遺愚草清書を祖父河内前司【于時大炊助】親行《ちかゆき》に誂《あつらへ》申されける時、親行申て云。「をお」・「えゑへ」・「いゐひ」等の。文字の声かよひたる誤あるによりて。其字の見わきがたき事有v之。然間、此次をもて。後学のために定おかるへき由、黄門に申所に、我もしか日来より思ひよりし事なり。さらば主爨【大炊唐名】が所存の分書出して可v進由、仰られける間。大概如此注進之処に。申す所悉其理相叶へりとて、則合点せられ畢。然者文字遣を定事、親行が抄出是濫觴也。加之、行阿思案するに。権者の製作として。真名の極草の字を。伊呂波に縮《しゝめ》なして。文字の数のすくなきに。「いゐひ」・「をお」・「えゑへ」。同読の有にて知りぬ。各別の要用につかふへき謂を、然而、先達の猶書漏されたることもある間、是非の迷をひらかんがために、追て勘ふるのみにもあらず。更に又「ほ」・「わは」・「むうふ」の字等を。あたらしくしるしそへ畢。其故は、「ほ」は「を」によまれ。「わ」は「は」にかよふ。「む」は「う」にまきる。「ふ」は又「う」におなじきによりて。是等を書分て段zとす。残所の詞等ありといへども、是にて准拠すへき歟。仍子孫等此勘勒を守て深秘すべし。

此序によるに。行阿親行の抄を披見せられたりと見えたり。其後失たる歟。世に聞えず。行阿の抄の中に定て皆載らるべし。然るに混乱猶おほきは。親行も世俗流布の仮名にまかせれける歟。又行阿の添られたる中にあやまり出来たる歟。又行阿の勘そへられたる、ほわは等にも、混乱あり。無用の事もなきにあらず。是によりて、今撰ふ所は、日本紀より三代実録に至るまての国史旧事紀古事記万葉集新撰万葉集古語拾遺延喜式和名集のたくひ。古今集等。及ひ諸家集まてに。仮名に証とすべき事あれば、見及ぶに随ひて、引て是を証ず。次第はいろはによりて、いより初む。胆《い》・色《いろ》・岩《いは》など。下の字もまたいろはに任す。尋やすからんがためなり。言の中下にある「い」は。次に別に載す。鷂《はいたか》・恣《ほしいまゝ》のごとし。上の字次第、いろはなり。次に「ゐ」。上のことし。次に「ひ」。是は中下に有て、音便《おんびん》「いゐ」にまがふを附て出す。次に「をおほ」、右に同し。親行の「ほ」をいはれざるは。「へ」等に准らふるに事足らず。次に、「えゑへ」、又おなし。次に、「わは」。是は上にありてはまがふ事なし。中下に有て。音便によりて、「は」の字「わ」と聞えてまがふ故に、先「わ」、次に「は」をおく。次に「うふ」。是もまた中下に有て。「ふ」の字「う」と聞ゆることある故に出す。其外初学のために。はかなき事とも少z考そへたる事あり。又かゝる事は末なり。声字の本より知おかば。漸zにみづから得る事もあるべきがために。其由初に少z注し。次に五十音を出し。いろはを注しなどして。「いゐ」等をば末に置也。

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