韻鏡諸鈔大成巻之七和語法決

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韻鏡諸鈔大成巻之七和語法決

韻鏡諸鈔大成

おおむね『日本釈名』を襲っているものと思われる。

一に自語とは、天地《アメツチ》男女《ヲメ》父母《チヽハヽ》等の類なり、是上古の時自然に云出せる語なるを以て。其故はかり難《がた》し。妄《みだり》に義理をつけて解ぺからす。

二に転語とは、五音相通によりて名付し語なり。譬は上《カミ》を転じて君《きみ》とし、高《タカ》を轉じて竹《タケ》とし、黒《クロシ》を轉じて烏《カラス》とし、盗《ヌスミ》を轉じて鼠《ネズミ》とし、染《ソミ》を轉じて墨《すみ》とするの類なり。又轉語にして略語をかねたるも多し。

三に略語とは、言葉を略するを云なり。[ひゆる]を氷《ヒ》とし、[しぱしくらき]を時雨《しぐれ》とし、[かすみかがやく]を春日《カスガ》とし、[たちなぴく] を[たなぴく]とし、文出《フンデ》を筆《ふで》とし、墨研《スミスリ》を硯《すゞり》とし、宮所《ミヤトコロ》を都とし、[かヘリ]を鴈とし、前垣《まへかき》を籬《マガキ》とし、[きこえ]を聲《コヱ》とするの類なり。其略に上略中略下略あり、又略語にして轉語をかねたるも多し。

四に借語は他の名と言葉ことば》を借、其まゝ用ひて名付たるなり。日《い》をかりて火《ヒ》とし、天《アマ》をかりて雨《あめ》とし、地《ツチ》をかりて土《ツチ》とし、上《カミ》をかりて神《カミ》とし、髪《カミ》とし、疾《トシ》をかりて年《トシ》とし、蔓《ツル》をかりて弦《ツル》とし、湖(ママ)《シホ》をかりて鹽《シホ》とし、炭《スミ》をかりて墨《スミ》とするの類也。

五に義語とは、義理を以て名づけたるなり。諸越《モロコシ》を唐《モロコシ》とし、気生《イキヲヒ》を勢《イキヲヒ》とし、明時《アカトキ》を暁《アカツキ》とし、口無《くちなし》を梔《くちなし》とするの類なり、又是を合語とも云。二語を合たる故なり。又義語にして轉語をかねたるもあり。

六に反語とは仮名反切也。[はたをり]を服部《ハトリ》とし、[かるがゆヘ]を[かれ]とし、[かれ]を故《け》とし、[ひら]を葉《ハ》とし、[とをつあはうみ]を遠江《とをたふみ》とし、[やすくきゆる]を雪とする類なり。

七に子語とは母字より生する詞を云。一言母となれば其母より生するを云なり。日の字を母字として于《ひる》、晷《ヒカゲ》、光《ひかり》を生じ、月を母字として晦《ヅゴモリ》、朔《ツイタチ》を生じ、火を母字として炎《ホノヲ》、焔《ホムラ》、埃《ホコリ》を生じ、水を母として源《ミナモト》、溝《ミゾ》、汀《ミギハ》、港《ミナト》を生する類なり。

八に音語とは。音を以て直に和語に用るなり。其音語に三様あり。一には字の音を其のまゝ用ひて和語とせしは、菊《きく》、桔梗《キキヤウ》、繪馬《ヱムマ》、石榴《しゃくろ》等なり。二には唐音《タウヰン》を其まゝ和語に用たるあり。杏子《アンズ》、石灰《シツクイ》、波稷《ハウレン》等なり。三には梵語を用たるあり。尼《アマ》、猿《サル》、斑《マダラ》、盗《すり》等なり。

右八つの法をはづるる和語はなし。異朝の文字は、六書をのがれざるが如し。

(原文片仮名

以下、天象、時節、地理、宮室、地名、水火土石金玉、人品、形体、人事、鳥類、獣類、虫類、魚類、介類、米穀、草類、木類、飲食、衣服、文具、武具、雑器、虚字。これも、日本釈名に同じ。

ただし、中身は違うものもあり。

上記、「梵語」で、ホトトギスの代わりに、盗《すり》を出すなど。

書籍からの画像で注記のないものは、著作権法上の「引用」の範囲内であるか、著者の著作権が切れて刊行後五十年以上経っているものである筈です。