金草鞋

国語史・日本語史周辺(日本文学・日本史・言語学などなど)の覚書です。
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金草鞋

草双紙

十返舎一九

方言修行/金草鞋

http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_137939

金草鞋 草雙紙 合卷 二十五編(各編大體六册合一册、中に九册合一册のものもある)

作者十返舍一九

【畫工】月麿・美丸・國丸・國直・國兼・國安・重政・國信・美政

【名稱】角書には多く「方言《むだ》修行」とある。尤も「西國陸路」「箱根七温泉江之島鎌倉廻」などとその内容を明示するものもあって、必ずしも一樣でない。

【刊行】天保五年初編刊行、同五年二十五編刊行。一々の刊行年代は詳かでない。金森堂版。

諸本一九全集(續帝國鼻文庫)に十三編まで、「續一九全集」(續帝國文庫)に二十五編までの本文を收載してゐる。

解説】奧州の狂歌師鼻毛延高と同國の遊歴僧知久良とが諸國見物の伴侶となることをシテアドの言葉として狂言風に書いて發端とする。二人の見物は江戸に始まって、諸國に及ぶ。その歴遊する名所舊蹟・宿驛・港灣を背景として、二人の演ずる滑稽、また見聞の滑稽を曾話體で叙し、所々に狂歌を挿んでゐる。その土地と人物と滑稽の事蓼の間には必ずしも關係がなく、各事項の間に殆ど聯絡がない。各地を背景とする獨立した小咄と見るぺきである。それでも二人の人物が幾つかの小咄を縫って或る程度の關係を示してゐるのは江戸見物の編である。江戸と田舍との言葉の不通が滑稽の骨子である。「膝栗毛」と同じ作意で、趣同としては、その逆用であることが知られる。かういふ趣向は洒落本以來、すでに行はれてゐることで別に珍しくないが、「膝栗毛」の作者がこの田舎者を用ひたところに、多少の興味が加へられたであらう。編中附録として奥州言葉註釋を附したのも、洒落本中にすでに存してゐるが、兎に角に作者の用意を知ることが出來る。しかし編を重ねるに從つて、滑稽をそれ等の人物に纏綿することを必要としなくなつた。それと共に、初の部分に於て割合に稀薄であつた族行案内風のものが漸く濃厚になつてゐる。毎丁の小咄には依然として滑稽を盛り、隨分猥雜を極めてゐるが、大體の傾向は、地理的方面に甚だ眞面目になった。要するに作者は「膝栗毛」の筋立を斷裁して各丁の小咄となし、その風土の叙述を毎丁のさし繪となして、合卷の體裁をとると共に、「膝栗毛」の中に伏在する一面、それも續編に於て、漸く擡頭し出した地誌・案内記の一而を明かに示さうとしたのであらう。各編の内容をなす土地は、左の如くである。初・二編江戸見物、三編大阪京見物、四編西國道中、五編木曾路、六編奥州路、七編鹿島筑波日光、八・九編西國巡禮、十編坂東巡禮、十一編秩父巡禮、十二編身延、十三編甲信、十四編四國遍路、十五編江戸八十八所巡禮、十六編二十四輩、十七編房州、十八編越中立山、十九編白山、二十編羽黒、二十一編南部、二十二編熱海、二十三編江島箱根、二十四編金比羅、二十五編長崎宮島。而して二十五編には故人の遺稿と署し、また二十六編として大和めぐりの潰稿出版の豫告をしてゐる。しかし刊行の運びに至らなかつた。この土地の順序は一定の標準がなく、多くは板元の囑のま丶に述作したといふことは、屡々その序中に見えてゐる。故に全部刊行になつた後は、多少の考慮を以て順序を變更した。初版再版に於て順序に異同があリ、ずつと後になつて摺られたものは、更に丁數のやりくりをなして、二十四編となしたものもある。   〔山口〕

書籍からの画像で注記のないものは、著作権法上の「引用」の範囲内であるか、著者の著作権が切れて刊行後五十年以上経っているものである筈です。