詞八衢

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詞八衢

ことばのやちまた

   詞八衢   二巻  本居春庭

 我が言語の性質及び活用法を示したるもの。今日に謂ゆる文典書なり。「詞八衢」と名けたるにつきては、巻首の詞中に、「こを詞八衢としも名けたるよしは、同じことの葉も其の活きざまによりて、いづかたへも赴き行くものにしあれば、道になぞらへてかくはものしつるになむ。見む人よくたどりてふみまがふることなかれ」といへり。文化三年丙寅〔二四六六〕五月十三日尾張植松有信の序あり。又本居大平の跋を添ふ。本書を補ひたるものに、中島廣足の「詞八衢補遺」あり。解釋したるものに、渡邊弘人の「詞のやちまた語釋」といふものあり。

 ◎本居春庭宣長の男なり。建藏と樗し健亭と號す。夙に父の志を嗣ぎて古學を研究し、殊に語學歌道に造詣せり。若年に至り病で明を失す。稻懸大平を迎へて父の嗣となし、自ら松坂に在りて父の業を嗣ぎ門生を教授す。世に後鈴屋翁と稱す。著書には本書の外、詞の通路、道の幸草、門の落葉、後鈴廼舎集等あり。文政十一年戊子〔二四八八〕十一月七日、六十六にて歿せり。

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/kokusyokaidai/k5/kokusyo_ko092.html

http://blog.livedoor.jp/bunkengaku/archives/50351244.html

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/syomokukaidai/ka/kaidai_ka155.html

言葉の八衢 二巻二冊

 文化三年本居春庭著。文化五年刊本、同十三年刊本文政元年弘化三年慶應二年明治十七年等の諸刊本本居宣長全集所収。「御國詞活用抄」「詞の玉緒」「活語斷續譜」等を基礎として廣く中古言によって言葉活用とその係結とを研究したものであるが、四段、一段、中二段下二段變格等、活用の類別は本書の創唱になるもので今日もなほ大體襲用されてゐる。又活用形を六段に分つ事も本書を嚆矢とする。尤も下一段活用を逸し、ラ行變格について明確な見解を有たなかった事は動詞研究の書としては不備な點である。その他形容詞及び助動詞の大部分は殆んど顧られなかったことも本書の缺點であるが、活用研究の基礎を確立した事にその劃期的價値を認めなばならない。即ち本書は古く平安朝末期から起った假名遣及び手爾波の研究に對して、新しく徳川の中期に至って漸く初まった活用の研究に學的独立を附與したものであり、爾後活用研究家を「八衢派」と稱して手爾波呼應研究家を「玉緒派」と云へるに對立せしめたのも尤なことゝ思はれる。

【末書】

言葉の八衢疑問東条義門著。文化八年文化十年の二書がある。後者は前者を補ったものである。「八衢」の誤謬を指摘してゐる。

「友鏡底廼影科?」二巻 東条義門著。八衢を増補訂正して八衢中に書入れて置いたものを歿後小田清雄が書入を抜出したもので書名小田清雄がつけたものである。卓説に富んでゐる。

詞八衢捷徑詞玉緒統括/辭玉襷富樫廣蔭著。文政十二年奧書刊本。「八衢」の言葉の活、「玉緒」の手爾波呼應の研究を合せて一枚の圖に示したものである。義門の「友鏡」の所説も受容れてその活用の種類を七類、活用形を五段にした組織は「八衢」より遥に進歩してゐる。

八衢大略」一巻 足代弘訓著。安政四年奥書刋本。「八衢」を基礎として其要点を記したもので廿五章から成る。

八衢補翼足代弘訓著。活用音韻變化てにをは等について隨筆的に記してゐる。

「詞の八衢補遺?」(蔭踏道?とも云ふ)二巻 中島広足著。安政四年刋。上巻は「八衢」及び「山口栞」に漏れた用言についての研究。下巻は附録として「だに、すら」「さへ」の使ひ方等について記してゐる。

詞の直路」二巻 山田直温?著。「八衢」に出てゐる用言を總べて五十音順配列してその活用な記してゐる。

詞八衢補正」三巻 岡本保孝著。上巻には「八衢」の序文批評。「八衢」に漏れた動詞等を記し中巻以下は四種の活用、受ける詞略言、延言等その他見る可き所説が多い。

「増補標註/詞の八衢?」二巻 清水浜臣増補 岡本保孝標註 加部巌夫校正 明治十三年刊。浜臣及び保孝の書入れを上欄に記してゐる巖夫の説は僻言が多い。

「詞八衢頭註?」二巻 権田直助著。「八衢」に關する諸家の説及び自家の所説を書人れてゐる。

「言葉のやちまた語釈?」二冊 渡邊弘人?著。明治十七年刊。明治廿五年「改正増補/言葉のやちまた語釈」一冊刊。擬古文で記されてゐる「八衢」の難解な点に口語釋をなし、又上欄に單語解釋語法上の解釋を加へたもの。

詞の通路」(別項參照)

「八衢靹の響?」百巻 生川正香著。用例を豊富に集めてゐる。

亀田次郎国語学書目解題」)

書籍からの画像で注記のないものは、著者の著作権が切れ、刊行後五十年以上経っているものである筈です。