言語の発達段階

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言語の発達段階

言語の発達段階 (心理) 

(1)言語の発生――言語の前段階は動物にも認められる。言語の三大機能(→言語心理学)のうち、表出の機能は犬が足を踏まれた時、猫がのどをなでられた時の発声などに見られる。呼びかけ機能は昆虫や鳥類の求偶発声にも現われる。叙述機能はすでに食物の色やにおいのうちに存在するとも考えられるが、かの条件反応構成の実験が示すように、食物の直前に与えられる信号は、何に限らず食物を代表することができるようになる。しかし、言語にはそれ以上に、かかる記号を手段として能動的に使用するという機能が付け加えられなければならない。かかる機能はアリの交通や、ミツバチの餌踊や、群棲鳥獣の歩哨の叫びや、カケスの餌鳥を呼ぶ鳴き声のうちにも認められると言えるかもしれない。しかし、それらはいずれも先天性のものであるのに、言語は後天的に学習されるものであるから、そこに何か人間特有のものがあると考えられていた。ところが、近ごろの研究によると、いわゆる道具的条件づけなるものが動物にとつても可能であることが示された。すなわち、例えばてこを押して餌が得られるならば、そのてこを押すという間接的手段が学習される。のみならず、チンパンジーなどでは、その手段によって、餌ではなく、餌の代理である符が得られるにすぎないような場合にも学習が成功することが見出された。もちろん、これは音声を手段とする場合ではない。しかし、犬がワンといえばピスケットを与えられるような練をされる場合などには、音声が手段となっているのであるから、結局、原理的には言語機能はすべて動物にとっても可能なものばかりであり、ただ複雑な分節的記号の連続的使用が、かれらにとっては不可能であるということになるのであろう。

(2)発達段階-生まれたての赤子の泣き声のうちには、すでに表出および呼びかけ機能が認められる。ただ表現の機能のみは一歳ごろまでその発現が保留されるのである。泣き声でなく、発声音節を構成するようになるのは一―二カ月後であり、オックンとかオンゴンとか一言えるようになるのは三カ月ごろである。快不快や欲望・満足などの発声は五-六カ月ごろ、連続的な「おはなし」、すなわち喃語《ナンゴ》(別項)を発するようになるのは六-七カ月ごろである。八-九カ月ごろになつて他人の話に注意する態度を示し、他人の発声をまねするようになるが、それから間もなくウマウマ等の単語を言うようになるのである。これまでをシテルン()に従って準備期と名づけよう。準備期から第一期への発展はあまりはっきりしない。それはウマウマ等の単語が果して表出機能をもって発音されたのか、あるいは単なるまねにすぎないかを区別することがむずかしいからである。だから、はっきり一語が言えるようになる時には、すでに別の語も言えるようになっており、それを標準にすると、ことばが言えるようになる時期は平均してだいたい十三カ月ごろということになる。ただし、この時期が数カ月ぐらい遅れても他に異常がなければ、べつだん心配することはいらない。普通この段階が数カ月続くが、幼児はその間、少数の単語単文のように用いて意志の疎通を行うから、これを一語文(↓二語文)の時期と言う。第二期はだいたい一年半から二年ごろまでで、その間に物には名のあることをさとり、急に語彙が増加すると同時に、一方では二語から成る単文を用いることができるようになる。品詞の出現順序は通例、名詞-動詞-副詞および接続詞-形容詞および数詞-代名詞であり、二年目にはだいたい出そろう。そして、最初ば名詞がほとんど全部であったのが、二年目には名詞六〇%、動詞二〇%ぐらいになると言われる。第三期はだいたい二年から二年半ぐらいで、用言活用可能になり、かなり複雑な構文も成人のまねをして言えるようになる。ただし、文の運びは簡単な並列文に終始する。第四期はだいたい二年半以後で、いろいろに従属文が可能になり、助詞などが出そろう。そして満三-四歳ごろには日常生活に差支えないほどの語彙を覚え、それを種々なる組合せで使用することができるようになるから、品詞の出現頻度率も成人の日常語と大差のないようになってくる。もとより、所有する異なり語数は満三歳では数百にすぎないが、小学入学の際は五千となり、中学入学の際は二万、大学入学の際は四-五万あるいは、それ以上に及ぶと言われる。なお、シテルンによると、一年目は名詞が絶対優勢であるから実体期、二年目は動詞の進出が著しいから活動期、満三1四歳ごろには形容詞関係詞の使用が容易になるために、この時期は属性および関係期と名づけられることもある。↓言語心理学。   〔矢田部達郎

 〔参考〕 『児童の言語矢田部達郎

書籍からの画像で注記のないものは、著者の著作権が切れ、刊行後五十年以上経っているものである筈です。