粘葉

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粘葉

 粘葉 でつえふ 書誌學

【名稱】デッチョウと讀む。黏葉とも書く。

解説】装幀から見た圖書の種類の一。冊子本(別項)の一種で、紙を一葉づつ中央より縱に二つ折とし、折目をそろへて積み重ね、毎葉外側の折目の延べに糊をつけて、前の紙と後の紙とを繼ぎ合せたもの。隨つて、もとの一紙が二丁となり,左右の二丁が同じ紙である處は、折目まで開く事が出來るが、異る紙である處は、折目に近く糊で貼附した處までしか開かない。さうして、最初から順次に丁を開いて行くと、折目まで開く處と、そこまで開かない處とが一つおきにあらはれる。一紙兩面に書寫、又は印刷するのが常であるが、宋代の刊本には、毎紙の内面(即ち折目まで開く丁)にのみ文字があつて、外面は文字がないのがある。

表紙〕前後二枚ある。最も簡単なのは、もとの紙の第一丁及び最後の丁をそのまゝ表紙に用ひたものであるが、その上に色紙や唐紙又は絹・羅などを貼附したものがあり背にも絹を覆うたものもある。弘法大師請来の三十帖策子の如きは、二枚の幅の廣い表紙をつけて書全部を包み、その端に竹を插んで緒をつけ、緒を以て全體をくるむやうにしてある。これは巻子本の體裁を取つたものである。表題は表紙に直ちに書き、別に題簽を用ひないのが常であるが、中には表の表紙の左方だけ色がはりの紙を用ひて、そこに表題を書したものもある。

〔用紙〕古くは主として斐紙を用ひたが、後には楮紙を用ひたものもある。また唐紙や色紙を用ひ、或はこれに金銀の箔や泥で、装飾を加へた甚だ美麗なものもある。

〔界格〕普通の寫本には内界を施して用ひるのが常である。

〔丁附〕丁附のあるものが多い。これは、もとの紙の一紙毎に、後の丁の裏面の折目に近く記入するのが常であつて、これがために、糊目の中に入つて透かさなければ見えない。また卷末の丁のこの位置に書寫の奥書があるものもある。

【特徴】冊子本全般に通ずる特徴の外、粘葉獨特のものとしては、

(一)一紙兩面に書寫する故、少しの紙数に多くの文字を収める事が出來る。

(二)裏面を利用する事は出来ない。

(三)一紙毎に糊貼けせられてゐる故、綴目が堅い。しかし蟲損を受け易く、もし綴目がはなるれぱ、収拾すること非常に困難である。

(四)多く積み重ねる事が出来る。

要するに、巻子本折本に比しては、便利な點が甚だ多いが、胡蝶装に比しては、綴目の堅い事、及び紙の多少を加減する事が自由である事、袋綴に比しては、紙数を多く要しない事ぐらゐの長所があるに過ぎない。さうして装幀は、これ等に比して多くの手数を要したであらう。

【備考】支那でいふ胡蝶装は、即ちこの粘葉の事であるとし、兩者を同一のものとする説がある。これは必ずしも否定出来ないが、現今では數紙を一緒に一折として、幾折かを重ね、折目を糸で綴ぢたのを胡蝶装といふ事が、かなり廣まつてゐる故、混雑を来すことを恐れて胡蝶装粘葉とを別のものとして取扱つた(胡蝶裝参照)。また書肆で以前からレツチヤウ(列帖・列丁など書く)といつてゐるのは、主として今いふ胡蝶装の事を指すらしい。なほ沿革に就いては別項「圖書」の中「圖書の歴史」の條参照。

【参考】難波江 岡本保孝○和漢書の装〓に就いて 吉澤義則國語國文の研究)     〔橋本〕

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