玉水物語

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玉水物語

玉水物語 御伽草子 一巻

作者】不詳

【名稱】主人公たる狐の化した姫の名に因る。異本の題名は、紅葉合の催あるに基づく。

成立】室町期

諸本】古板本なし・御伽草紙有朋堂文庫日本文學大系第十九巻所収。「紅葉合」と題する文詞を異にする一本がある。

題材】異類懸愛物。怪婚説話の変種。葛の葉傳説や「木幡狐」(別項)の男女の位置を異にしたやうなものであるが、操を汚すに及ばぬ點が異とするに足る。

梗概】中頃、鳥羽の邊に高柳の宰相といふ人があつた。申子に得た美しい姫を、ゆく〳〵は宮仕にと望を掛けてゐた。或る夕暮、姫が乳母子の月さえといふ女房を御供に花園へ出ると、木蔭にゐた狐が姫の美しさに魅せられ、美男に化けて逢ひ度くは思ひながら、惜しい御身を徒にしてはと思ひ返したが、餌食も摂らず悶えた末、せめては朝夕御側近く仕へて慰めようと、十四五の美しい女に變じて、男の子許り持つ或る在家に頼つて養はれ、傳手を得て本意の如く高柳殿へ上り、名を玉水の前と頂いた。御手水參らせ、供御參らせ、月さえと共に御きぬの下に臥し、特に怖がる犬を御所中に置かれない事になったり迄して他の妬みさへ受けてゐたが、玉水の心は暗かつた。三年を過した或る日、姫君の親しい方々が集つて紅葉合が催された。玉水は夜に紛れて元の宿所に行き、兄弟の狐によい紅葉を探して呉れるやうに頼むと、五寸程の枝に色は五色、葉毎に法華経文字を摺つた磨いたやうに鮮やかなのが届けられたので、姫君に奉ると、五度合せて五度姫の勝となり、この事、内にも聞召されて、その紅葉を、又姫君をも參らせるやう宣旨が下つた。玉水の前は感慨無量であつた。その頃、養ひ里の母が物怪に苦しむため、暇申して下り夜更けて一人起きてゐると、禿げた古狐が来て居り、よく〳〵見れば自分の伯父で、その子狐の咎もないのを病者の父が殺した報に、我もこの姫の命を取らうとしたのであったが、玉水が心を盡して様々に諫めたので、さしもの老狐も漸く退き、病者は本復した。霜月になり、入内の儀式は着々と進んだ。玉水も中将の君として召され、女房童三十人の一の位に定められたが、鬱々として楽しまず、心を砕いた果に、総てを細々と書き記して小箱に蔵め、我亡せて後開け給へ、人に見せ給ふなと泪ながらに姫に參らせ、当日車に秉るふりをして姿を隠した。殿では内へ御供したものと思ひ、内では常に気分が勝れないと云つてゐたから居残つたものと思ひ、二三日経つて何處にもゐないといふので、方々探させたが皆目知れなかつた。とある隙にかの箱を開けて姫が覧ると、文の詞の奥に長歌があり、なほこの箱は、人に厭かれぬ箱なる由細々と記してあつた。姫君は畜類ながらも有難き志と泪に咽ばれた。

【參考】近古小説解題紅葉合の項)  〔島津〕

(新潮日本文学大辞典 島津久基)

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紅葉合 寫一本

延齢渉猟書目に、「鳥羽院の御宇、高柳宰相殿の姫君いとうつくしくわたらせたまふを、ある狐かいまみて、思のあまり、姫君の側に侍らんことを顧ひ、女子と身を變じ、姫君の侍牌となり、玉みつ姫とよぱれ、紅葉合の御時、姫君のためにいとめづらしき紅葉をもとめさゝげ奉り、一時にほまれをあぐ。此事により、時の帝姫君を后にたてんとしたまふ、玉みつ且つ喜び且つ哀しみ、長歌を残し、もとのすみかにかへるといふ物語なり。」とあり。余未だこの書を見ず。

近古小説解題

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/kinko/konko_syosetu_kaidai446.html

岩波日本古典文学大辞典 田嶋一夫



http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_1407698

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1054345/23

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1018115/331 有朋堂文庫

https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00013653

http://www.j-texts.com/chusei/tama.html

https://ci.nii.ac.jp/naid/40016909294 PDFなし

室町時代物語大成 8 底本京都大学図書館本(上記web公開本)

『京都大学蔵むろまちものがたり』12 底本京都大学文学部蔵本



市古貞次中世小説の研究』

http://dbrec.nijl.ac.jp/RONBUN_01001252

http://dbrec.nijl.ac.jp/RONBUN_01002055

http://dbrec.nijl.ac.jp/RONBUN_01084390

http://dbrec.nijl.ac.jp/RONBUN_01255178

書籍からの画像で注記のないものは、著作権法上の「引用」の範囲内であるか、著者の著作権が切れて刊行後五十年以上経っているものである筈です。