以呂波問辨

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以呂波問辨

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/kokusyokaidai/i/kokusyo_i093.html

以呂波問辨 いろはもんべん 語學書 一卷

著者諦忍

成立寳暦十三年正月稿成り、同十四年正月刊。

【内容】伊呂波作者字義字體等について問答體で記述したもの。

先づ伊呂波弘法大師の作と云ふ説を斥け、「この四十七字は.天照大神大己貴尊に授けられたもので、後、弘法大師はこれを記憶し易いやうに歌(いろは歌)に作り、更に唐の草書の法に随つて、伊呂波字體を定めたのであるとして、神代文字の存在を説き、次に「古語拾遺」、貝原益軒の「自娯集」、太宰純の「和讀要領」等に、我が古代に文字なしと云つてゐるが、若し神代に文字が無いならば、素戔嗚尊の「八雲たつ云々」の歌を三十一文字と云ふ筈はなく、その他の歌も傳はる筈はない。聖徳太子は平岡宮、泡輪《あわ》宮にある神代の文字を見られたと古書に明記がある。而して太子は神代文字は通じ難いからと云つて、四十七字旧の字體漢字に改められたのである。益軒・純兩儒の所論は、無稽の甚しきものであると云ひ、次に支那上代文字、籀書.篆書.隷書等のことを記し、漢字の渡來を説き、出雲神門郡神門寺に、弘法大師眞筆の「いろは」があつて、その字體には梵字の筆法も加はつて居ると述べてゐる。

次に片假名五十音圖について.同圖は梵字から出來たものであるとし.世には吉備眞備五十音圖を作つたと傳へて居るが、眞備の時代には、梵字は傳はつて居ないから、五十音圖弘法大師或はそれ以後の逹人の作であらうと云ひ、梵字伊呂波及び五十音圖を示し、梵字伊呂波及び五十音圖とは全く相通ずる。梵字は梵天の教ふる所であり、梵天は大毘盧遮那佛である。天照天神も本地は大毘盧遮那佛である。故に梵字伊呂波とは符合するのであると。

次にいへとり等の假名字源を記し、いろは歌に「京」字のあるは後世の附會なる事、「伊呂波天理抄」「伊呂波童蒙抄」等の説は取るに足らぬ事、片假名字源等を記し、次に「ひふみよいむなや」等の神字四十七字語義解釋してゐる。附録に支那古代文字籀書・篆書の類十二種の見本を擧げてゐる。

解説】本書の所論は、凡て偏狹な日本尊重の思想と、神佛混淆の思想とを基礎として、神代文字の存在を主張したものである。がその論據甚だ薄弱であり、學術的價値としては殆ど認むべきものが無い。

【影響】本書が出て間もなく尾張の僧.道樂庵金龍敬雄が「駁以呂波問辨」一册(「神國神字辨論」の卷頭に收む)を著して反駁したので、諦怨は更に「神國神字辨論二卷(安永七年成る。刊)を著して鎌倉鶴岡の八幡宮に存すると云ふ神字を擧げて大に論ずる所があつた。後に神代文字の存在を極力主張した平田篤胤(別項)は、諦忍の影響を受けたこと頗る大なるものがある。篤胤の著「神字日文傳」は神字の信ずべきものとして十三種、疑はしきものとして三十餘種を舉げて考證してゐるが、その中に「諦忍和尚の、鶴岡宮に傳はれる字を世に著せるより、それに驚かされて、諸國の神社古寺に祕め在りし遺文どもの次々に現はれて、今はかく數多集めて考へ合さるゝ事としも成にたり」と云ひ、諦忍の研究を「いとも感《めで》たき功なりけり」と賞讃してゐる。    〔龜田〕

http://blog.livedoor.jp/bunkengaku/archives/25261247.html

以呂波問辨 一巻一冊

 僧諦忍の著。寶暦十四年刊。伊呂波作者字義字體等について問答體に記述したもので伊呂波四十七文字は天照大神?が大己貴尊?に授けられたもので弘法大師は只記憶に便して之をいろは歌につくり、唐の草書の法からその字體を定めたのみであると言ひ、神代文字の存在を説き、或は「ひふみよいむなや?」等の神字四十七字語義解釋し、又五十音圖についてはこれは梵字から出來たものであると言ひ、梵字伊呂波五十音圖を書き、梵字は梵天の教ふる所。梵天は大毘廬遮那佛?・天照大神?も本地は大毘廬舎那佛?であるが故に梵字伊呂波とは符合するのであると説くが如き全く非學術的であり、凡て偏狭な日本尊重の思想と神佛混淆思想との産物に過ぎない。本書刊行後間もなく尾張の僧道樂庵?金龍敬雄は「駁伊呂波問辨?」を著してこれを反駁し、諦忍はこれに對して又「神國神字辨論」を以って神代文字の存在を主張した。後平田篤胤神代文字の存在を極力主張したが諦忍所説の影響が大きい。

亀田次郎国語学書目解題」)

http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ho02/ho02_04345/

http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ho02/ho02_04253/

書籍からの画像で注記のないものは、著作権法上の「引用」の範囲内であるか、著者の著作権が切れて刊行後五十年以上経っているものである筈です。